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雨が好き
第96章 心の風景
夏の夜
白装束の狐のお嫁さん
その行列が
提灯の灯りにぼんやりと照らされながら
しずかに、しずかに歩いていく。

それをお父さんとお母さんが、二人で見つめている
そっと寄り添う背中

そんな光景を思い浮かべたら、
なんだか、私の胸はとても、じん、とした。

「お父さん・・・嬉しかった?」

聞くと、お父さんは、もちろん、と言った。

「なんだか、お母さんの思い出を
 分けてもらえた
 そんな気がしたからね」

そうか・・・

お父さんのお話を聞いて、
私は窓の外に目をやった。

お母さんの、思い出
私の・・・思い出

このとき、私の心に浮かんだ光景があった。
これを、そっと取り出して
渡して・・・みる・・・?
それは、私がやったことがないことのひとつだった。

さっき、狐の嫁入りの話をしていたときの
お父さんのお顔を思い出す。

とても、懐かしそうな、優しそうな目

やったことがないことを、やろうとするのは、
私にとって、相変わらず勇気がいることだけれども、

蒼人さんも、
私の心の中の風景を
あんな風に見てくれるかな・・・

だったら嬉しいな

そう、思った。
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