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雨が好き
第97章 夜桜
そんな感じで、しばらく歩いていると、
私が今夜、目的地と決めていた場所が
見えてきた。

風が、吹いてくる。
花びらが、一枚、私の胸に飛び込んできた。

「ああ、すごい。
 桜、ですね・・・」

川が大きく右に曲がる
その曲がった部分にあるちょっとした広間に
桜の木がある

木のそばには白銀灯があって
その白い光が
ほころび始めた
淡いピンク色の桜の花を
闇から浮かび上がらせていた。

「きれいですね」
ほうと、蒼人さんがため息をついて、私の方を見た。

うん・・・
ひとつ頷いて

息を吸って、気持ちを整えて
私は、少しの勇気を出す

「あ・・・あのね、蒼人さん」
「なんですか?」

・・・今日、私、ここにあなたを連れてきたかったの

そう言って、桜の木を見上げた。
この桜の木は、私の大好きな、大好きな場所だった。
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