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雨が好き
第17章 海岸線

お父さんは当時、会社員で、そのお仕事がうまくいき始めていたところだったから、一緒に東京に来てほしいと、言ったそうだ。
「お母さんが小さくうなずいてくれたときが、お父さんの人生の一番のハイライトだったよ」
お父さんがにっこりと笑った。
お父さんはずっと海を見ていた。キラキラと光る凪いだ海。
時折、海鳥の声が聞こえた。
「お母さんが死んで・・・お父さんは、もう一回結婚しようとは思わなかったの?」
尋ねると、お父さんは、少し上を向いて考えたけど、首を振った。
あまりそんな気になれなかった・・・。
そう言った。
「それに、みなとがいたから」
言って、慌てて付け加える。
「いや、みなとが邪魔で結婚できなかったとか、そういう意味じゃなくて・・・その、みなとがいて・・・だから・・・お母さんとお父さんの子だから」
なんとなく、お母さんと一緒にいる気がしたから・・・
その横顔がなんだかとても優しげで、それでいて、寂しげで、
ああ、人ってこんな複雑な表情ができるんだと、私は思った。
結局、お父さんがどういう理由で、ここに私を連れてきたのかは最後までわからなかった。
でも、一応最後に、
「だからさ・・・みなとも頑張れよ」
とよくわからないまとめ方をして、励ましてくれた。
それは、不器用だけど、なんだか、ちょっと、嬉しかった。
「お母さんが小さくうなずいてくれたときが、お父さんの人生の一番のハイライトだったよ」
お父さんがにっこりと笑った。
お父さんはずっと海を見ていた。キラキラと光る凪いだ海。
時折、海鳥の声が聞こえた。
「お母さんが死んで・・・お父さんは、もう一回結婚しようとは思わなかったの?」
尋ねると、お父さんは、少し上を向いて考えたけど、首を振った。
あまりそんな気になれなかった・・・。
そう言った。
「それに、みなとがいたから」
言って、慌てて付け加える。
「いや、みなとが邪魔で結婚できなかったとか、そういう意味じゃなくて・・・その、みなとがいて・・・だから・・・お母さんとお父さんの子だから」
なんとなく、お母さんと一緒にいる気がしたから・・・
その横顔がなんだかとても優しげで、それでいて、寂しげで、
ああ、人ってこんな複雑な表情ができるんだと、私は思った。
結局、お父さんがどういう理由で、ここに私を連れてきたのかは最後までわからなかった。
でも、一応最後に、
「だからさ・・・みなとも頑張れよ」
とよくわからないまとめ方をして、励ましてくれた。
それは、不器用だけど、なんだか、ちょっと、嬉しかった。

