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波の音が聞こえる場所で
第8章 取り調べと化した久須美の面接についての一部始終
 しかし、小学校三年生僕は僕の勝利に満足しなかった、らしい。小学校三年生の僕が描い勝利の絵は、圧倒的な大差をつけて勝つ自分の姿だった、らしい。その不満を僕は前日の夜に食べた夕食の献立に文句を言った、らしい。 
 自分が相手を完膚なきまでに叩きのめすことができなかったのは、飯のせいだと小学校三年生の僕は喚いたそうだ(すべて母親談)。
 そんな話を涙を交えて話す母。テレビドラマでよくあるシーンに似ているような気がした。「田舎にいるお前の母さんが泣いてるぞ。凶器を捨て人質を解放して出てきなさい」とベテラン刑事が犯人を諭すお決まりのシーン。
 だが僕はそんなことで心が動くことなんかない。お涙頂戴より、服とスニーカーと当面の資金を頂戴したいのだ。それがなければこんな河口の端のちょっと高いところにあるリサイクルショップでは生きていけない。
 僕は今僕が欲しているものを僕の母に伝えた。メモを取るからちょっと待ってと母は言った。すると受話器の向こう側からクソ親父の声が聞こえた。「あのバカ」「図体だけはでかくなって」とか僕をディスる言葉を連発していた。
 僕は言いたい。あなたが言う「図体だけでかくなったバカ」はあなたの息子です、と。
 それから僕の母は「お父さんが翔に話があるから」と言って僕の父に電話を代わった。どうせ「あのバカ」「図体ばかりでかくなって」の続きを聞くことになるのだろうから、僕は父のその言葉に備えた。準備万端。さぁ来い!
 しかし僕の父はただものではなかったのだ。僕の父は僕にこう言い放ったのだ。
「このバカ野郎!お前は破門だ!」
「……?」
 勘当を破門と言い間違えてしまう僕の父親。笑えない。笑えるはずがない、だって僕はこの破門親父の血を受け継いでいるのだ。切っても切れない縁。久須美はそれを取り立て屋と言っていた。
 電話が母に代わったので、どうしても守って欲しいことを僕は母に言った。このことは絶対に山名や権藤に知らせるな、と。
 もしやつらが今僕の事情を知れば、腹を抱えて笑うに決まっている。間違いなく、あの二人はここまでやって来て、僕を指さして笑い転げるに違いない。あの二人だけには僕の冒険を知られたくない……。
 考えてみれば、こうなったのもあの二人に責任があるのではないか。絶対にあいつらのせいだ。いやいやあの二人のことを考える時点で僕は敗北している。
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