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波の音が聞こえる場所で
第9章 安奈という女について
 1979年10月5日に発売された甲斐バンド13枚目のシングル……シングルって何だろう?
 いやいや今はシングルが何なのかなんて考えている場合ではない。今現在、僕といっちゃんが所属する白組は劣勢なのだ。だから僕といっちゃんは挽回しなければいけない。
 僕といっちゃんは無理やり白組に組み込まれた。できることなら僕は白組ではなく紅組に入りたい。紅組の席でおばさんたちに囲まれていたい。
 紅白歌合戦なんてしばらく見ていない。最後に見たのは確か小学四年か五年の頃。僕は大みそかの夜、ちょっとだけ夜更かしして和服を着た名前も知らない熟女に恋をした。あのおばさんに抱きつきたい。でもって犬のようにクンクンしたい。するとそのおばさんは僕にこう言う『翔君てワンちゃんみたいね』と。そして僕はそのおばさんにこう返す『僕、おばさんのワンちゃんです』と……? 違う!今問題なのは白組が劣勢だと言うことだ!
 もうこうなったらいっちゃんがアマゾンの箱から探し出してくれた安奈……安奈さん……安奈様にかけるしかない。さぁ来い!クリスマス!アマゾンの箱はトナカイに乗ったサンタクロースが運んでくれたんだ!(置き配指定※この時期サンタさん再配達はしておりません)
「先輩、これクリスマスソングかもしれません」
「だよね。そうだよね。クリスマスソングだよね」
 僕はいっちゃんのスマホを覗き込んで湧き上がってくる喜びを必死に抑えた。白組に活路あり。よっしゃー!
 だがここから十数秒沈黙。僕もいっちゃんも一言も話さず。十数秒後、いっちゃん我慢しきれず僕にこう問いかける。
「1979年て平成ですか?」
「今令和でしょ」
 答えになっていない。
 どうやら僕といっちゃんの元号は令和と平成だけで成り立っているようだ。
「1979年は……昭和54年です」
「昭和?」
 ガキから「先生、東大じゃないんですよね?」と言われ続けた僕でも日本史と世界史くらいは人並みに勉強してきた……が、昭和のイメージがわかない。そんなのは当たり前だ。僕もいっちゃんも昭和という世界を見たことがない……。おっ? 一つだけあった。SONYが1970年代に作った壊れているラジカセ。めっちゃ重くて武骨なやつ。
 ということは、甲斐バンドが歌った「安奈」はこのラジカセでも聴かれていた可能性がある。きっと聴かれた……絶対にこのラジカセで聴いていた……はず。
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