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甘いピンクの果実
第1章 元アイドルの女子アナ。生島絵梨花
 「サービス早出です。店長今週ハードなシフトだったじゃないですか。それで代ろうかと早めに」
 「店長の仕事だから。佐藤君もサービス早出とかいわずにタイムカード押してよ」
 「では、お言葉に甘えて」上着を脱いで佐藤がタイムカードを押しながらテレビを見る。
 「おっ、エリリン。ホントに女子アナになったんですね」
 「こういうのどうなの」
 「こういうのとはなんでしょう」
 「アイドルが元アイドルか。女子アナになる。そんなの訊いたことないんだけど。」佐藤は売れない役者の卵をしているイケメンだ。だから訊いてみた。
 「確かにそうですね。詳しくはわからないけど、でも大成功じゃないですか。アイドルやめて女子アナになったのは自分の意志か事務所の方針かわかりませんけど、こうして女子アナにじっさいなってますからね」
 「元アイドルだから女子アナになれたのかな」
 「う~ん。ないと思いますよ。毎年各局の新人アナウンサーって男女で四、五人くらいですよ。所属してる事務所が大手だからアイドル辞めてアナウンサーになる。それなら各局の新人アナウンサーは元アイドルだらけになりますよ。カノジョは相当勉強をして、その努力の結果じゃないですか」
 「そうなんだ」秋葉乃が気のない返事。
 「それより鈴木さんの具合はどうですか。連絡ありました」鈴木は遅番のリーダー。ここ三日ほど体調不良で休んだので秋葉乃が通常のシフトと鈴木の代わりに深夜シフトにはいった。鈴木からの連絡が届いていた。
 『すいませんでした。平熱に戻りました。明日の夜からシフトにはいります。ご迷惑をおかけしました』昨日届いていた。だから明日とは今日の夜だ。
 「だいじょうぶみたいだね」その場で『了解。無理はしないでください。無理そうなら連絡お早めに』返信する。
 「よかった。店長今週何時間シフトにはいってます」秋葉乃のシフトは毎週ちがう。誰もシフトにはいらない時間帯か、それと誰か休んだりした代わりだ。
 「いいよそれは慣れてるから。これ」今週の売り上げと発注の確認をし、簡単に引継ぎをする。「ほか、なにかある」秋葉乃が立ち上がる。
 「岡山さんなんですけど」岡山さん。岡山奈々は学校帰りに三日か四日シフトにはいる女子校生だ。
 「やめそう」
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