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東京帝大生御下宿「西片向陽館」秘話~女中たちの献身ご奉仕
第2章 女中 良枝

 日曜日、良枝は朝餉を下膳した後、すぐに笠井の部屋に戻ってきて、<二、三日は天気が悪かったが、今日は寒くてもよく晴れたので、いっぱい洗濯する>と言い、日頃の洗濯ものに加えて、布団掛けや敷布まで持ち出していった。笠井は、レコードを聴きながら、新刊の音楽評論誌に目を通して、一日をゆっくりと過ごした。

 冬至が近く、夕刻の早目の時間でも、既に日は暮れていた。干し終ってアイロンがけをした洗濯ものを抱えて、良枝が笠井の部屋に入り、<風呂の支度が出来た>と告げた。前日の夜、笠井に言われて添い寝に来た良枝が、<今日から、孕みやすい時期になったのでご配慮を>と請うた時に、笠井は、<明日は、夕方早めに一緒に風呂に入るから、支度を>と言い置いてあった。
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