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東京帝大生御下宿「西片向陽館」秘話~女中たちの献身ご奉仕
第3章 女中 千勢(ちせ)

誠一は、話を聴いて、胸が詰まり、少し目を潤ませた。その表情を見た幸乃は、安心したように誠一に微笑みかけ、深々とお辞儀をしてから部屋を出ていった。部屋に残って朝餉の給仕をしている千勢に、誠一が優しく話しかけると、千勢もすっかり打ち解けて、明るい表情で話し始めた。
「夜間女学校の同級生には、どんな人たちがいるの。」
「はい。女中も多いのですが、喫茶の女給、看護助手、百貨店員とか、色々な人がいます。私は、こちらに奉公に上った次の春からですので、二年遅れて入学したのですが、もっと年長の方も多いんです。志望先は、私と同じ医専のほかにも、皆さんそれぞれに高等師範や高等商業を目指して、頑張っています。」
「そうですか。さっき幸乃さんが<千勢さんは成績優秀だ>と言っていましたが、特に得意とする教科もあるんでしょう。」

