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東京帝大生御下宿「西片向陽館」秘話~女中たちの献身ご奉仕
第3章 女中 千勢(ちせ)

「苦学して途中で退学する同級生も多い中で、私は、こちらで十分なお手当てをいただきながら、昼間に自習に使える時間もありますので、本当に恵まれているからこその成績だと思って、感謝しているんです。その中でも、私は幾何や代数が好きで頑張っています。医専の試験で大事な科目ということもありますし。」
「私は、中学、高等学校とその方はダメでね。文科志望で、あまり力も入らないままだった。うらやましい限りだ。」
「とんでもございません。幾何、代数と言っても、帝大の学生さんから見れば、あくまで女学校の程度でございます。」
誠一は、千勢との会話が弾み、爽やかな気分で朝餉を終えると、学生服に着替え、千勢の 「いってらしゃいませ。ご主人様」 の声を背に、部屋を出たのだった。
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