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東京帝大生御下宿「西片向陽館」秘話~女中たちの献身ご奉仕
第4章 女中 清(きよ)
「それは良うございました。鮭は、おかみさんの手配で<村上の塩引き鮭>を取り寄せました。お餅は、ご主人様が送ってくれたものです。私たちにまでお気遣いをいただいて恐れ入ります。皆で毎日おいしく頂いておりますが、たくさんで、まだ食べきれておりません。」 清はそう言って、屈託なく笑った。
「餅つきは、親戚うちだけでなく、使用人や小作の皆さんも総出で丸二日がかりでしてね。本家からの年賀として、それぞれが分けて持ち帰る風習なんです。」
「いかにも越後の大地主様らしい大掛かりなお話で、私どもでは想像もできません。私は下町育ちで、正月のお餅は、暮れに餅屋で十個ばかりを買って、時には近所で分け合ったりするのでございます。」