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東京帝大生御下宿「西片向陽館」秘話~女中たちの献身ご奉仕
第4章 女中 清(きよ)
「ご主人様。入ってもよろしゅうございますか。」 と、清の声が遠くからしたような気がして、朧気に 「はい、どうぞ。」 と、短く答えたつもりではあったが、しばらく寝入っていたようで、薄目を開けた時には、清は、誠一の脇に正座して、腰に両手を当てて、静かに優しく撫でるように揉んでいた。誠一が目を開けたことに気付いた清は、 「肩もお揉みしましょうね。」 と言って、腰から肩に手を滑(すべ)らせ、しばらく揉み続けた。
清の心地よい手の動きに、再び浅い眠りについた誠一が、脇腹の辺りに温かい気配を感じて無意識に体を揺すると、腕が何かを抱き込んだ感触があった。眠気を振り払うように頭を振りながら目を開けると、いつのまにか仰向けに寝返りした誠一の脇で、清が横寝しており、誠一が腕枕の恰好で、清の肩を抱え込んでいた。誠一が頭を動かしたのを見た清は、片手で誠一の胸をさすりながら、顔を覗き込んだ。