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東京帝大生御下宿「西片向陽館」秘話~女中たちの献身ご奉仕
第4章 女中 清(きよ)
「ご主人様が、余りに気持ちよさそうな寝息をたてていらっしゃったので、このまま朝まで過ごしてもよろしいかと、寝顔を拝見しておりました。」
「清さんの揉み具合が上手で、すっかり寛(くつろ)いでしまった。有難う。どのくらい寝ていたのかな。」
「ほんの半時間ほどでございます。まだ夜は長ごうございますが、このままお休みになりますか。」
清の問いかけの意味を察した誠一だが、返事に詰まった。ふとした仕草や表情に三十路女の色香を感じさせる清が、今、寝床で誠一に寄り添っている。年末年始の二週間ほどを実家で一人寝で過ごした若者は、直ぐにも抱きしめて覆いかぶさりたい衝動にかられたが、一方で、年上の女性に対しては、背伸びをしてでも<大人の振舞い>が要(い)るのではないかと思いながらも、実際にどうすればよいか分からないという、戸惑いもあった。