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東京帝大生御下宿「西片向陽館」秘話~女中たちの献身ご奉仕
第4章 女中 清(きよ)
誠一は、気持を落ち着かせるように、 「喉が渇きました。」 と、話を逸(そ)らせた。清は、 「湯上りにとお持ちしたものが、すっかり冷えてしまいましたが、渇いた喉には、その方がよろしゅうございますか。」 と言いながら、黒漆の盆にのせた九谷焼の急須から大きな湯呑に茶を注いだ。誠一は、ゆっくりと起き上がって<あぐら>に座り、一気に飲んで大きく深呼吸してから、正直に気持ちを打ち明けた。
「今夜は一緒に過ごしてくれませんか。でも、私は経験が浅いので、清さんのような大人の女性を相手に、どのように振舞ってよいか分からないんです。」
「これまでご主人様の当番に付いた女中たちが、皆、<女中の気持ちを思いやって下さるし、ご自分の気持ちも正直に伝えてくれるので、ご一緒していて安心する>と言っているのが、清にもよく分かりました。今夜は私にお任せ下さいませ。」 清はそう言いながら、潤んだ目で誠一を見つめながら、続けて言った。
「若い女中とでは経験出来ないようなことを、お知りになるのもよろしいかと存じます。」