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東京帝大生御下宿「西片向陽館」秘話~女中たちの献身ご奉仕
第4章 女中 清(きよ)

 翌日からは毎日、誠一は、本郷にある洋画が多く掛かる純喫茶で、友人たちと文学論を語らったり、部屋に籠って夜遅くまで文芸誌を読んで過ごした。清とは、毎夜、夕餉の後にお茶を出しに来た時に、脇に座らせて息抜きに世間話をした。<江戸前の雑煮>は、すまし出汁に薄切り大根、ホウレン草、鶏肉が入るなどと、話が弾んだ次の日には、朝餉にそれが出て来るといった清の気配りに、誠一も、年増の女中との接し方に次第に馴染んでいったが、寝間での奉仕は求めなかった。

 というのも、帰省から戻って初めて当番女中として接した折に、清が寝床で見せた<男性に羞恥心を煽る恰好をさせて性感を昂める>振舞いに、誠一はひどく戸惑っていた。あの未知だった快感を再び求めたい気持ちや、他にどのような淫靡な性技があるのかという興味も強いが、自分からそれを言い出すと、節操のない青年と思われるのではないかと躊躇していた。それに、その後は何事も無かったように女中仕事をしている年上の清から見ると、あの時の性技に敏感に反応してしまった自分が、随分と初心(うぶ)に映ったのではないかと、自嘲もしていたのだ。
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