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東京帝大生御下宿「西片向陽館」秘話~女中たちの献身ご奉仕
第1章 女中頭 幸乃(ゆきの) ~ 「西片向陽館」の秘密

 三島は、幸乃の肩を抱き寄せ、片手を大きな乳房に当てながら答えた。 「ああ、そうさせてもらうよ。家内には、吉川君のことを話して、泊りになると言い置いてきた・・・。幸乃・・・、館主を引き受けて直ぐに、お前がこういう関係を受け入れてくれたお陰で、気持ちに張りが出てきた。うちの奥は華族のお姫様育ちで、夜伽で感じてしまうなど<はしたない>という了見で、子作りの役目はもう果たしたからと、今では寝室も別でな。銀行での立場もあると、気軽に遊べる場所にも出入りしにくいし、時々はこうして荒々しく振舞いたくなるのさ。」

 「そのような時にお役に立てるのでしたら、私も嬉しゅうございます。」 幸乃は、掛け布団の端から滑り出て、脱ぎ捨ててあったネル地の襦袢を肩にかけると、部屋隅の手火鉢の鉄瓶から急須にお湯を取り、大ぶりの湯飲みにお茶を淹れて、三島の枕元に置いた。

 幸乃が、続けて 「お風呂にされますか。女中たちも、湯あみを済ませて、それぞれのご主人様の寝間に入った頃ですので、お気兼ねなくどうぞ。」 と勧めると、三島は、お茶をすすりながら、 「そうしようか。背中を流してもらうかな。」 と幸乃を誘って、立ち上がった。幸乃は、押入れの行李から、男物の緑灰色の丹前を取り出して、裸の三島に直接着せ、自分は藍染木綿の寝間着を巻いて、三島に寄り添うように廊下に出た。

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