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東京帝大生御下宿「西片向陽館」秘話~女中たちの献身ご奉仕
第4章 女中 清(きよ)
それが、清のお陰で現実の趣味に変わっていった。普段から、年長の清に対しては、経験の豊かさから来る包容力のようなものや、時には母性のようなものを感じて、安心して何でも話していたが、ある時、サドの禁制本のことや、自分が<緊縛>に興味を持っているということを、寝床の中で話した。
すると、清は、 「女囚の捕縛拷問を描いた<錦絵>や、女性を凌辱する<責め絵>が愛好家の間で珍重されている。緊縛美人図で人気の伊藤晴雨という日本画家もいる。」 と教えてくれたのだ。清の裏風俗にまで及ぶ博識に驚くと同時に、そういえば、サドの禁制本を見せてくれた英国の友人も、<これは上流社会で密かに好まれてきた高級な趣味のひとつ>と言っていたなと、納得もした。