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東京帝大生御下宿「西片向陽館」秘話~女中たちの献身ご奉仕
第4章 女中 清(きよ)
そもそも、この本は、馴染みになった古書店の店主から、<まだ若い学生さんだから、ご趣味が悪い方向に昂じて将来を台無しにしないように、この本を読んで、わきまえた振舞いを覚えなさい。>と勧められたものだった。その時は、言われた意味がよくは分からなかったが、目を通してみると、腑に落ちることがあった。
それは、一口に<緊縛>と言っても、サドの「悪徳の栄え」にあったような<女体を責めたり凌辱することで鬱屈した精神を開放する>という、残虐な西洋的感性と、<女体の淫靡な美しさを愛でて精神的な快楽を得る>という、卑猥だが耽美的な日本的感性とは、全く違うということだった。そう考えると、清から聞いた<緊縛美人図で人気の日本画家がいる>というのも納得だった。