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東京帝大生御下宿「西片向陽館」秘話~女中たちの献身ご奉仕
第4章 女中 清(きよ)

 清は、少し肌寒かったのか、両手で羽織の前襟を持って体の前を隠しながら、戸田の肩に預けた頭を上に向け、目を見詰めながら言った。

 「ご主人様。清は無学で言葉を知らず、上手に申し上げられませんでしたが、そのことに自分でお気付きになられたようで、嬉しゅうございます。」

 「清から見ると、私の振舞いが随分と危うく見えたんだろう。<若い女中にはお止めなさい>と常々言ってくれていたのも、そういうことだったんだね。有難う。」

 「世の中には、エロ・グロ雑誌や猟奇小説なども出回っておりますが、それはあくまで作り話で、実際のこととなると、女子(おなご)の体も心も傷つけてしまいます。」

 「心しておくよ。それにしても、どうせ答えてはくれないんだろうけど、清はどうしてそこまで深くこの趣味のことを知っているのか、これまでにどのような経験をしたのかと思うよ。」
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