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東京帝大生御下宿「西片向陽館」秘話~女中たちの献身ご奉仕
第2章 女中 良枝
誠一は、良枝の身の上や、健気(けなげ)な言葉に胸を詰まらせ、涙が出そうになるのを堪(こら)えて暫く沈黙していたが、深呼吸してから、優しい口調で言った。 「こちらこそ・・・感心する話ばかりだよ。さっき、<お風呂で背中を>と言ってくれたけど、今日は初めて見聞きして戸惑うことばかりで、気疲れしてしまったので、お風呂には一人でゆっくり浸かってくるよ。その後で、また少しお話の続きをしようか。」
良枝は、「はい、かしこまりました。」 と返事してから、昼間に「次の間」の押し入れに整理した衣類の中から、黒染めの京和晒綿紗(きょう・わざらし・めんしゃ)の寝間着と、下帯や手ぬぐいを取り出して胸に抱えた。そして、誠一を風呂場まで案内した後、夜具の準備のため、部屋に戻って行った。
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