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東京帝大生御下宿「西片向陽館」秘話~女中たちの献身ご奉仕
第2章 女中 良枝
誠一は、半時間も湯に浸かったまま、ぼんやりと、下宿に入って慌ただしかった一日の断片を思い返していた。叔父が使わせてくれた自家用車の運転手の白い手袋、耳元で<抱きしめて>とささやいた幸乃の髪油の香り、夕餉の終わりに<幸乃さんは三島さんと一緒に消えてしもうた>と言った笠井の含み笑い。
そして、良枝が<今夜からよろしくお願い致します>と言った時の、健気(けなげ)な表情が頭をよぎると、誠一は、部屋に戻った後のことを具体的には想像できずに不安を感じながらも、自分の身に新しく何かが起きるという高揚感に、湯の中で勃起を覚えた。それで我に返った誠一は、湯船から揚がって、気持ちを落ち着けるように、努めて淡々と手ぬぐいで体を拭いた。