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東京帝大生御下宿「西片向陽館」秘話~女中たちの献身ご奉仕
第2章 女中 良枝
寝間着を巻いて部屋に戻った誠一は、良枝は暫くしてから、身支度をして寝間での奉仕に来るものだとばかり思い込んでいたので、何気なしに「次の間」から「座敷」に入ろうとして襖を開けた。ところが、そこには、絹の薄襦袢を纏(まと)った良枝が正座し、三つ指をついてお辞儀をしていた。部屋には枕が二つ置かれた夜具が敷いてあり、卓上スタンドが文机から枕元に移されていた。スタンド笠のビロードの青が、良枝の薄襦袢に映って、華奢な体を幾分か妖艶に見せていた。
誠一は、予期していなかった光景に、しばらく立ち尽くしていたが、やがて良枝が顔を上げて硬い笑顔を作り、掛け布団を上げたのを見て、やっと襖を閉め、敷布団の端に腰掛けるように座り込んだ。<抱きしめていただくだけで、女子(おなご)は嬉しいものでございます> 昼間の幸乃の言葉が頭をよぎり、誠一は良枝の手を取って引き寄せ、やさしく包み込むように抱きしめた。良枝は、無言で従順だったが、身を固くしているのが誠一の腕に伝わった。しばらく、静かな時間が流れた。
誠一は、予期していなかった光景に、しばらく立ち尽くしていたが、やがて良枝が顔を上げて硬い笑顔を作り、掛け布団を上げたのを見て、やっと襖を閉め、敷布団の端に腰掛けるように座り込んだ。<抱きしめていただくだけで、女子(おなご)は嬉しいものでございます> 昼間の幸乃の言葉が頭をよぎり、誠一は良枝の手を取って引き寄せ、やさしく包み込むように抱きしめた。良枝は、無言で従順だったが、身を固くしているのが誠一の腕に伝わった。しばらく、静かな時間が流れた。