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東京帝大生御下宿「西片向陽館」秘話~女中たちの献身ご奉仕
第2章 女中 良枝
良枝は、一瞬、目を潤ませたようにも見えたが、はじけるような笑顔になって、 「優しいお言葉をかけていただいて、嬉しゅうございます。この後は、いつもの女中仕事に戻らせていただいて、よろしゅうございますか。」 と、返事をした。
「ああ、そうして下さい。それとね、もうこれで昼餉はいいから、もし手間がとれるようなら、3時頃までにお使いに行ってくれないか。湯島坂下にある「岡野」で、豆大福を買ってきて欲しいんだ。他の女中さんにも行き渡るように、大きい方の<折り箱>でね。帰ってきたら、良枝ちゃんもこの部屋で一緒にいただこう。」 誠一はそう言って立ち上がると、「座敷」の文机まで巾着を取りに行き、円札を二枚ほど良枝に渡した。
「かしこまりました。」 良枝は、お札を両手で受け取ると、帯前に挟み込み、お膳を下げていった。
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