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東京帝大生御下宿「西片向陽館」秘話~女中たちの献身ご奉仕
第2章 女中 良枝
透き通ったソプラノの歌声が静かに流れた。笠井が片腕で良枝の肩を抱くと、良枝は、最初は膝に置いていた手を笠井の脇腹に当てて離れようとしたが、やがて力を抜いて、<桃割れ>に結った髪を笠井の肩に載せて、じっとしていた。笠井がささやいた。 「そうじゃ。怖がらんでええけぇ・・・。体を寄せ合(おう)ての、しばらくこうしておったらええんじゃ。」
そのうちに、レコードが終わって、ジリジリという針音だけが続いていた。再び笠井がささやいた。 「幸乃から話を聞いて、驚いたろうに。それでも、親に心配かけんように奉公を続けるとな・・・。感心じゃの。」