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東京帝大生御下宿「西片向陽館」秘話~女中たちの献身ご奉仕
第2章 女中 良枝
すると、部屋に入ってからずっと黙っていた良枝が、小さな声で話し始めた。 「こちらでのご奉公は、驚くほどのお手当がいただけると聞いた時から、普通の女中働きではないと思っていました。少し慣れてきた頃に、女中のお姉さんたちが、夕餉の後に皆さまのお部屋にお茶をお持ちして、夜遅くまで戻って来ない日があることに気付いていたんです。日によっては明け方まで。それに、風呂場の入り口に襦袢の紐が掛かっているのは、他の人は遠慮するようにという合図だと言われました。だから、何が起きているか、およそ見当はついていて、覚悟していたんです。」
「幸乃の言うとったとおり、賢(さと)い娘(こ)じゃ。そんでも、最初は、男に触られるだけでも恥ずかしかろうが。少しずつ慣れていかんとの。」 笠井はそう言うと、良枝の綿紬の上から、胸をさすった。良枝は、驚いたように身をよじって、一旦は笠井の肩から頭をはずし、両手で胸を隠した。しかし、直ぐに、下唇を噛んで笠井の目を見つめながら、両方の手のひらで笠井の手を包み込み、そっと自分の胸に添えた。笠井は、良枝の決心の仕草を愛おしく思い、欲情を覚えると、<あぐら>の上に後ろ向きに抱き寄せて、前襟から手を滑(すべ)り込ませた。