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東京帝大生御下宿「西片向陽館」秘話~女中たちの献身ご奉仕
第2章 女中 良枝

 その日、笠井が大学から戻ると、良枝は「次の間」で、綿紬の袖にエンジ色の<たすき>を巻き、洗濯したシャツに電気アイロンをかけていた。笠井が、 「ご苦労さんじゃの。わしゃあ、今から風呂も夕餉も早目に済ませたいんでの、支度を頼むけえ。今夜はの、ちいと遅うまで研究室で頼まれた原稿書きをせにゃならんのじゃ。」 と、声を掛けると、良枝は急いで風呂の支度に立った。

 やがて、「次の間」での夕餉も終わって、お膳を引いている良枝に、笠井が、 「今夜は添い寝をしてもらうけえ、11時を過ぎたら、寝間着に着替えて部屋においでんさい。」 と、声を掛けると、良枝は、顔を赤らめながらも、嬉しそうに 「かしこまりました。ご主人様。」 と返事し、一人で「座敷」に入っていく笠井を見送った。

                   ☆
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