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東京帝大生御下宿「西片向陽館」秘話~女中たちの献身ご奉仕
第2章 女中 良枝
笠井は、毎夜、当番の女中に添い寝をさせたが、レコードを聴きながら布団の中で寄り添い、難しい時事から映画のことまで世間話をして、ゆっくり過ごすだけの日も多かった。女中たちも、岡山訛りで面白おかしく話す笠井との、寝床での寛(くつろ)ぎの時間を楽しみにしている様子だった。その笠井が良枝を抱いたのは、当番初日の月曜日の後は、木曜日になってだった。
その日、笠井は、「次の間」での夕餉の後、良枝に、<片付けが終わったら、夜具を敷くように>言い置いて、先に「座敷」に入り、電気蓄音機に、ビーチャム指揮ロンドン交響楽団のモーツァルトの交響曲第39番を掛け、その前に横寝した。ほどなく、良枝が、敷布団の上に枕を二つ置きながら、恥ずかしそうな表情をしたのを見た笠井は、優しく微笑んで手招きし、膝枕をさせた。笠井が、良枝の膝を撫でながら、のんびりとした口調で話し始めた。