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東京帝大生御下宿「西片向陽館」秘話~女中たちの献身ご奉仕
第2章 女中 良枝
「月曜日は、遅い時間からじゃったけえ、いきなり始めてしもて、ちいと慌ただしかったのう。今日は、まずレコードでも聞いて、ゆっくりしてからじゃ。これは、モーツァルト言(ゆ)うての、今年の春に出たレコードがやっと手に入ったんじゃ。」
「有難う存じます。女中のお姉さんたちも、ご主人様のお当番の時は、レコードを聞かせてもらえるって、楽しみだと言っています。それに・・・。」 良枝が口ごもったので、笠井は膝に載せた頭だけを上に向けて、良枝の顔を見上げると、頬を赤く染めていた。 「それに・・・何じゃ。言うてみんさい。」 と、おどけた口調で問いかけると、良枝は、両手を口に当てて、首を横に振った。
「申し訳ございません。つい、うっかりと。お姉さんたちの秘密の話なのに、どうしよう。」