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脳内妄想短編集
第3章 束縛愛
「何よ」
低い声が出た。自分で意識してのものではなかった。
「やっぱりやめよ? あたし怖いよ」
震える声で、理恵はそう訴えてくる。
苛立ちを抑えようとしたあたしの声は、さらに低くなった。
「今さら引き返せないって言ってるでしょ? あんたとのメールのやり取りも、別の場所でのやり取りも、全部残ってるのよ? あたしの計画に加担した、共犯なの。バラされたくなかったら、約束通り廃墟に来て。いい? わかった?」
「……でも」
「大丈夫。捕まらないよう、綿密な計画を立てたでしょう?」
猫なで声を絞り出し、彼女にそう語りかける。
「……うん」
「じゃあね、理恵。待ってるから」
通話を切った。彼女の性格上、おそらくここで逃げたりはしない。サイトで出会って今まで、ずっとあたしの言いなりだったんだから。
あたしは彼女との履歴を消した。携帯をまた、ポケットへとしまう。
車は人気(ひとけ)のない山の中へと入っていく。すでに国道を抜け、車は一台も見かけない。夜中なのだから当たり前だった。闇がぽっかりと口を開け、あたしを誘(いざな)っていた。