この作品は18歳未満閲覧禁止です
- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
脳内妄想短編集
第3章 束縛愛
あたしは遙斗の手首にそっと触れてみた。温かい手。あたしの。
理恵に対する苛立ちが、急速におさまってくるのを感じた。
遙斗の寝顔を見つめる。微かに開いた唇に、指をそっと当てた。規則正しい息遣い。
もうすぐあたしのものになる。あたしだけのものになる。
あたしの唇は、自然と笑みの形に歪んでいた。
これから罪を犯そうとする時。法に触れ、悪事を働こうとする時。誰かを傷つけようとする時。人はこんなにも穏やかで、優しい気持ちでいられるものなのだろうか。
――だからあたしは異常者だ。
鼻歌を口ずさみ、さらに車の速度を上げた。ライトを上向きにする。車はどんどん、民家のない山の奥へと進んでいく。
すべてが終わったら、死んでもいいとさえ思えた。