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脳内妄想短編集
第1章 ヒモ
怒っているのか喋るのが辛いだけなのか、口を聞いてくれません。私は冷えた麦茶をわざと少し温め、彼に差し出しました。
「ごめんね。可愛かったからつい。怒ってる?」
「……恥ずかしいです」
うん、可愛いです。彼は目さえ合わせてくれませんでした。一切女性として意識してなかった私とあんなことになってしまい、戸惑っているようでした。
しかし、ここであっさり引く気は私にはありません。懲りずにまた、麦茶に媚薬を入れておきました。麦茶を温めたのも、彼の体調を気遣うふりして、実は媚薬を溶かすためだったのです。
この三日間、彼に出す飲食物には少しずつ媚薬を混ぜていこうと思っていました。彼が自分から、私とのそういう関係を求めるように。
大丈夫です。体に害が出るような飲ませ方はしないよう、媚薬に対する取説は、しっかり読んでおきました。
彼は知らずに、麦茶を飲み干しました。私はドライヤーで彼の髪を乾かし、ベッドに寝るよう促しました。翌日の日曜日は、私も彼も昼過ぎからの出勤です。中休みなので混むでしょう。すでに深夜三時をまわっていました。