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脳内妄想短編集
第1章 ヒモ

 それを彼も知っていたので、本気にはしていなかったと思います。

「いいっすよー」
「ほんとに? じゃあさ、三日間私んち泊まりに来て掃除とか洗濯とかしてよ。タダで泊めてあげる。プラス、一日一万払うからさ」
「マジで言ってんすか? ……あーまあいいっすよー。掃除とかくらいなら」

 どうやら完全に、私に対する警戒心はないようです。まさかの、あっさりと了承されてしまいました。
 あいにく私は一人暮らし。彼は実家暮らしですが、どうやら両親はあまり厳しくないらしいです。
 二週間後の週末が、土、日、月と三連休なので、金曜の夜から月曜まで私の家に泊まりにくることに決まりました。
 私は内心、ドキドキしていました。彼が好きとか、そういう感情があるわけではありません。

「バイトの人には言うなよ。なんか変なふうに勘ぐられても、嫌だからさ」
「わっかりましたー」

 いつもの軽い調子でそう念を押すと、彼もいつもの調子で笑って頷きました。
 私の企みを、この時の彼が知るはずもありませんでした。
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