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脳内妄想短編集
第1章 ヒモ

 走行中、私は冷静さを取り戻すにつれ、不安が大きくなるのを感じました。彼に職場の人にちくられたら。部屋にあるビデオカメラが見つかったら。同時に、彼にあんたイタズラをしてしまった罪悪感は、消えませんでした。
 それともう一つ。彼がなぜ帰らないのかというのも気になりました。昨日お風呂でイタズラした時も、今日も、三日間ヒモになるなんていうふざけた約束、破ってしまえばいいのです。好きでもない異性に性的なことを求められた時点で、私が彼の状況なら、おそらくとっくに帰っていました。一日一万。三日で三万。確かに魅力的な支払いではありますが、そこまでされて欲しがるほどの大金でもありません。私には彼の考えていることが、まるでわかりませんでした。
 スーパーで買い物を済ませてアパートに戻る頃には、十二時半をまわっていました。一時間半かかりました。彼は下着を洗い、風呂も済ませ、疲弊してはいますが、不思議なくらいいつも通りでした。
 彼の要望で、今夜はすき焼きです。翌日の月曜は私は午後二時、彼は夕方五時からの出勤でした。時間ならまだあります。私たちは急いですき焼きを作りました。
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