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脳内妄想短編集
第1章 ヒモ
――そう、彼が片付けたということ。彼以外に、この浴室を使った人物などいないのですから。
ふと、脱衣所に人の気配がしました。私はおそるおそる、振り向きます。そこにはやはり人影がいました。
「今日も背中流すんすか?」
もちろん彼でした。私が何も答えられずにいると、開けますよ、という声とともにドアが開きました。彼が先ほどと同じ笑みを浮かべ、立っています。
私の心臓は、バクバクと早鐘を打ち始めていました。
「ねえ、カメラ……どこにやったの?」
犯人は彼以外に考えられないのです。盗撮していることが、少なくとも浴室での盗撮は、バレているということです。
私は直球にそう質問しました。
「片付けましたよ。もういらないと思ったんで」
彼は平然としていました。食器や部屋の片付けと、まるで同じように言うのです。邪気のない、いつも通りのその態度が、その状況では不気味に見えて仕方ありませんでした。
「カメラのこと、いつから気付いてたの?」
「昨日の夜から気付いてましたよ。リビングのも」
「……なんで何も言わなかったの?」
「きっと友梨香さんと同じ理由です」