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脳内妄想短編集
第2章 水中レッスン

 あたしは土曜日、朝の九時に真弓の家に向かった。プールが開くのが十時だから、開館時間に間に合うように行こうということになったのだ。
 真弓の家の前に車を横付けし、祐也くんにメールをすると、まず玄関から真弓が出てきた。
 真弓は助手席のドアを開け、あたしに向かって言う。

「おはよ。今日はよろしく頼みまーす!」
「はよー。……あんた仕事じゃないの?」
「今日は昼から出勤なの。――ほら祐也、準備できたー?」

 玄関に向かって呼びかける。自然とあたしもそこに視線を向けると、すぐにそこから、祐也くんらしき男の子が出てきた。
 あたしは何年ぶりかに見る祐也くんから、一瞬目が離せなくなっていた。

「ほら祐也、挨拶。璃子にあんま迷惑かけんなよ」
「わかってるよ」

 真弓に言って、あたしの方を振り向く。緊張した面もちで、よろしくお願いします、と頭を下げた。

「よろしくー。さ、どうぞ乗ってー。荷物は後ろに適当に放り込んどいてー」

 促すと、彼は鞄を後ろに置いて、助手席に乗り込んだ。真弓が手を振って見送っている。
 あたしは早々に車を発進させた。
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