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脳内妄想短編集
第2章 水中レッスン
あたしは助手席の脇に置いてある、白い箱を指差した。今かかっているのは女の子女の子したラブソング。男の子はあまり好まないだろうと思ったからだ。
酷く緊張した様子に見えたからそう話しかけてみたけど、祐也くんは小さく首を振った。
「平気……です。今流れてる曲、好きなんで。ありがとうございます」
そう小さくつぶやいて、頭を下げる彼。なんか、肉食動物に怯える小動物みたいで可愛いなぁ。
「あの……せっかくの休みなのに、ごめんなさい。わざわざ」
「あーもう固い固い! いいよーそんなの気にしなくて! そのおかげでタダで大きなプール行けるんだし。早く泳ぎをマスターして、いっぱい遊ぼう!」
「……はい、頑張ります」
まだぎこちない笑みではあるけれど、ようやく笑ってくれた。あたしはほっとして、同時に少し彼に興味が湧いた。
「そういえば、朝ご飯は食べた?」
「はい、食べました」
そんな調子で会話を続けつつ、プールへと向かう。同時に頭の中では、どういう手順で彼を水に慣らすか考えていた。
土曜の朝はそれほど混んでおらず、開く時間より少し早めに着きそうだった。