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脳内妄想短編集
第2章 水中レッスン
このくらいの年の子特有の、まだ発達途中の中性的な容姿。骨格も、声も、体毛も。全てがその時のあたしには、魅力的に映った。
彼はあたしの視線に気付かず、真剣な面もちで、ゆっくりと歩を進めていった。
水位が胸あたりまである地点にさしかかった時、ふいにその足が止まる。あたしの手を握る手にも力がこもった。
体もかすかに、震えているように見えた。もしかしたら、溺れた時の記憶がフラッシュバックしているのかもしれない。基本的に、何かがトラウマになって前できていたことができなくなるのは、その時の記憶がフラッシュバックし、体が防衛体制に入るからだと、カウンセリングを勤める友人に聞いたことがあった。
あたしは彼の様子を黙って見守る。
彼は何度か深呼吸し、なおも進もうとした。その腕を引き、あたしは止める。
「これ以上は危ないって。無理して深い場所に進もうとしなくて、いいよ? 水に慣れるのが目標なんだから。それにここ、向こう側は水深二メートルだって。完璧足つかないし、溺れちゃうよ?」
「……はーい、すみません」