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脳内妄想短編集
第2章 水中レッスン
彼の背に腕をまわし、咳がおさまるまでひたすらさすった。ようやくおさまっても、なかなか呼吸が落ち着かない。しがみついてくる手も冷えていて、小刻みに震えていた。
「ごめんね、あたしのこと助けようとしてくれたんだよね? ありがとね? 一回プール上がろ?」
あたしは彼の頬にもう片方の手を添え、彼の顔を覗き込んだ。もちろん、溺れた時のことを思い出してしまっているのかとか、彼の水に対する恐怖心がさらに大きくなってしまうんじゃないかとか、そういうことを純粋に心配しての行動だったけど、彼の顔を見た瞬間、そうい気持ちはなぜだか吹っ飛んでしまった。
赤く上気した頬。まなじりにはうっすらと涙が溜まり、微かに開いた唇からは、せわしない呼吸音。苦しそうなその顔に、なぜだか気分は高揚した。彼を心配する反面、一番深いところに突き落としてみたいとさえ思った。
ふいに、塩素の匂いが鼻孔をくすぐった。赤く濡れた唇に、あたしの視線は釘付けになる。彼の体を、壁際にそっと押した。柔らかそうな唇に誘われるまま、気付いた時には、あたしは彼に口づけていた。