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第1章 プロローグ

やがて権蔵は葉巻を咥えたまま立ち上がり、ゆっくりとやよいのもとへ歩み寄った。彼は彼女の顔に近い応接椅子に腰を下ろすと、何も言わずにやよいを見据えた。
彼の鋭い眼差しに映るのは美しい肢体が無様に四肢を拘束され、端正な美貌に刻まれた苦痛の痕跡だった。眉間に刻まれた深い皺、震える身体、そして必死に耐える様子が、彼の視線を一層引きつける。

やよいもこの時、ようやく権蔵の姿を捉えることができた・・・。
その表情には、相手を屈服させ、その生殺与奪の権を完全に掌握した支配者のような、満足げな笑みが浮かんでいる。そして、彼が手にしている乗馬鞭を目にすると、次に自分に何が起こるのかを悟った。その瞬間、彼女の身体はさらに緊張で固くなっていくのであった。
権蔵は彼女の緊張を肌で感じつつ、無言で彼女を見下ろしていた。
その静寂が、やよいの胸にさらなる圧迫感と恐怖をじわじわと植え付けていった。

権蔵は彼女に顔を近づけ、至近距離で彼女を睨み付けるように見下ろす。
彼の吐く息と彼の体臭が直に届き、その上彼の顔の肌の荒々しい質感までもがはっきりと見え、その圧迫感にやよいは視線を外すことすらできないのであった・・・。