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隷落の檻・淫獣の島 ~姦獄に堕ちた被虐の未亡人~
第4章 早苗の過去
「ただ、娘を残して死ぬのはダメだぜ」

シュウが母に言っていた。母は、黙って、バツが悪そうに、わたしを見て、俯いた。やはり、死ぬ気だったんだって思った。死にたい気持ちもわかったけど・・・。

「死ぬ覚悟があるなら、何だってできるわ」

わたしが母に言うと、

「何だってできる?」

と、聞き返す母。

「お母さん、何が楽しくて、ずっと生きてきたの?したいことはないの?」

訊くと、母は、

「早苗さえ、無事に大人になってくれればいい」

と、答えた。

「普通、母親ってのはそういうものさ。だから、さっき、俺たちを道連れに死ねば、娘は助かるって思ったんだろ」

シュウが母に言った。そういうことだったの?

「セイジが離岸流だって言って、岸に戻らずに平行に進もうとしたときも、その前も、ずっと、お前の母さん、沖に向かおうと足掻いていたよ」

シュウがわたしに話した。

「自分が犠牲になることで、俺たちをまとめて死なせるつもりだったんだろ。実際、皆、集まって来て、もう少しで、全員、沖に流されるところだったからな」

シュウは、そう言ってから、

「でもな、娘さんが、一人残された時のことを考えな。これから、残された娘が一人で生きていくことをな、考えたら、俺たちを道連れに死んでも、何も変わらない。俺たちの代わりなんざ、いくらでもいるんだ。そういう奴らに、娘さんが取っ捕まるのに、時間はいらない。犬死だぜ」

母に、話して聞かせていた。

「っていうか、寒くなって来たぜ」

セイジが言った。皆、顔を見合わせて、頷いた。母も寒そうだった。皆、唇が紫色だった。

「そうだな。戻ろう」

シュウが言いながら、母を起こしながら、

「娘さんの言う通りさ。死ぬ気があるなら、何だってできる」

と、言っていた。誰一人、死のうとした母を批判しなかった。道連れして死のうとしたとわかっても、誰一人、母を責めなかった。妙にサッパリしていた。

「セイジ。着替えて、買い出しに行ってこい。食べるものは買ってきたが、服までは買ってねぇ」

シュウが話した。セイジが、

「大丈夫ですよ。前のところから、全部、運んでますよ」

と、答えた。

「でも、女の服は?」

と、訊くと、シュンが、

「あの家のタンスから着替えはボストンバッグに詰めて、バンにありますよ」

と、小さく笑った。
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