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こんなに晴れた素敵な日には先輩の首を絞めたい
第5章 第4話 尊敬できる先輩

「今日もみんなで来ましたよ、今から田中先生が診察をしてくださいますからね。お昼ご飯は食べられましたか?」
「ええ、ええ……どうもありがとうございます……」
「嶋田君の気遣いはいつも素晴らしいねえ、では今日も聴診をさせて頂きましょう。学生の皆さん、大高さんの聴診で何が聞こえるか一緒に考えてみましょう!」
研修医の後方にぞろぞろと付いてきている10人の医学生に、総合診療科教授の|田中《たなか》|源弥《げんや》先生は個々人の聴診器を取り出すよう促した。
大高さんは高度の大動脈弁狭窄症があるものの100歳という高齢のため既に治療適応はなく、入院中は循環器内科にコンサルトの上で経過観察を行いながら学生相手には聴診のいい見本となって頂いていた。
私もここまで著明な大動脈駆出性雑音を直接聞いたのは大高さんの聴診が初めてで、以前嶋田先生からノーヒントで聴診音を当ててみようと言われた時はすぐに答えが思い浮かばなかった。
嶋田先生は聡明でもかっこよくもないけど医療に対しては本当に真面目な人で、まだ2年目研修医になったばかりなのに1年目の私たちにも身体診察のやり方や電子カルテの操作法について熱心に教えてくれた。
指導医の先生方の計らいで医局でピザパーティーを開いて貰った時は嶋田先生はチーズが沢山載ったピザを美味しそうに食べていて、外来研修で遅刻した解川さんには残しておいた一番美味しいピザをレンジで温めて差し出していた。
嶋田先生は普段からこういうとても思いやりのある人で、私は研修医生活3か月目でこんなに尊敬できる先輩に出会えたことをささやかに喜んでいた。
あの日が来るまでは。
「ええ、ええ……どうもありがとうございます……」
「嶋田君の気遣いはいつも素晴らしいねえ、では今日も聴診をさせて頂きましょう。学生の皆さん、大高さんの聴診で何が聞こえるか一緒に考えてみましょう!」
研修医の後方にぞろぞろと付いてきている10人の医学生に、総合診療科教授の|田中《たなか》|源弥《げんや》先生は個々人の聴診器を取り出すよう促した。
大高さんは高度の大動脈弁狭窄症があるものの100歳という高齢のため既に治療適応はなく、入院中は循環器内科にコンサルトの上で経過観察を行いながら学生相手には聴診のいい見本となって頂いていた。
私もここまで著明な大動脈駆出性雑音を直接聞いたのは大高さんの聴診が初めてで、以前嶋田先生からノーヒントで聴診音を当ててみようと言われた時はすぐに答えが思い浮かばなかった。
嶋田先生は聡明でもかっこよくもないけど医療に対しては本当に真面目な人で、まだ2年目研修医になったばかりなのに1年目の私たちにも身体診察のやり方や電子カルテの操作法について熱心に教えてくれた。
指導医の先生方の計らいで医局でピザパーティーを開いて貰った時は嶋田先生はチーズが沢山載ったピザを美味しそうに食べていて、外来研修で遅刻した解川さんには残しておいた一番美味しいピザをレンジで温めて差し出していた。
嶋田先生は普段からこういうとても思いやりのある人で、私は研修医生活3か月目でこんなに尊敬できる先輩に出会えたことをささやかに喜んでいた。
あの日が来るまでは。

