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こんなに晴れた素敵な日には先輩の首を絞めたい
第11章 第10話 私がこの世に生まれた理由
 もう何も考えられなかった。


 普段持ち歩いているバッグ一つを手に持ったまま賢人の下宿を後にした私は、何を考えることもできないままJR如月駅で電車に乗り込んだ。

 乗り込んだ電車の向かう先は京都府そしてその先の滋賀県で、私はそのまま電車に揺られて滋賀県内に移動していた。


 そして大津を越えた先にある片田舎の駅にたどり着き、聞き覚えのある名前の駅で私は電車を降りた。

 久しぶりに長距離を移動して自動改札機には1000円以上の電車賃が表示されたが、その金額をもったいないと感じる脳の余裕は今の私にはなかった。


 駅を出て10分ほど歩き、私はふらつく足取りで周囲にコンビニすらない閑散とした住宅地を歩いた。


 そして既に22時を回ろうかという時刻に、私は数か月ぶりに実家の玄関を上がった。


「まあっ、どうしたの光瑠。こんな時間に連絡もなく来るなんて。私は全然いいですけどね」
「ごめんなさいお母さん。どうしても辛いことがあって帰ってきちゃった」

 ずっと憎んでいた母にこんな局面ですがりついてしまった自分自身にどうしようもない悲しみを感じ、私は玄関先に立ちすくんだまま両目から涙をにじませた。


「本当に大変なことがあったのね。晩ご飯まだだったら食べていって、もちろん今日は泊まっていいから」
「ありがとう……」

 脳梗塞の後遺症と戦っている母は片足を引きずりながら私を居間に通し、何も話すことができずに食卓の椅子に腰掛けた私に手押し車を使って今日の夕飯の残りとご飯を差し出した。

 昼から何も食べていなくて空腹だった私は無我夢中で食事を口に運び、脳梗塞になる以前から美味しくない母の手料理の味は今の私の身体にじんわりと染み込んでいった。
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