この作品は18歳未満閲覧禁止です
- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
Deep Throat - ディープスロート
第2章 葬儀
名古屋を過ぎ、東京に近付けば近づくほど、強くなる雨脚。田所は振り盛る雨を見つめ、ジャケットのポケットに入れた数珠に手を添え、心の中で『まだ怒っているのか…』と、念を唱えた。
そんな時、窓に人影が写った。
「田所先生…」という女性の声に、彼は慌てて振り返る。
そこに立っていていたのは、喪服姿の女性だった。あの葬儀中に何度も目が合った女性だった。
田所は驚きを隠しつつ、「ああ、先程葬儀にいらした…」と彼女の名前が分からず、言葉を詰まらせた。
彼女がとっさにバッグに手を入れる仕草をしたので、田所は「どうぞ…」と指定席のはずの席を譲り、席を隔てる肘置きを上げた。
「ちょうど乗る時に田所先生をお見掛けして…座ったままで失礼します…神宮書房の小倉と申します…」
彼女はバッグから革製の名刺入れを取り出し、一枚の名刺を田所に手渡した。
田所は名刺に書かれた『株式会社神宮書房 編集部 小倉彩芽(おぐらあやめ)』という名を見て、背筋がスッと伸び、丁寧に名刺を受け取った。
彼はふっと微笑み、「神宮書房さんの方でしたか…まだお仕事をしたことはないですけど…」と含みを持たせて、挨拶をした。編集者がわざわざ作家に挨拶する時は、目的がしっかりしているからだ。田所には慣れたやり取りだった。だが内心は彩芽という名に背筋が凍る思いだった。
そんな時、窓に人影が写った。
「田所先生…」という女性の声に、彼は慌てて振り返る。
そこに立っていていたのは、喪服姿の女性だった。あの葬儀中に何度も目が合った女性だった。
田所は驚きを隠しつつ、「ああ、先程葬儀にいらした…」と彼女の名前が分からず、言葉を詰まらせた。
彼女がとっさにバッグに手を入れる仕草をしたので、田所は「どうぞ…」と指定席のはずの席を譲り、席を隔てる肘置きを上げた。
「ちょうど乗る時に田所先生をお見掛けして…座ったままで失礼します…神宮書房の小倉と申します…」
彼女はバッグから革製の名刺入れを取り出し、一枚の名刺を田所に手渡した。
田所は名刺に書かれた『株式会社神宮書房 編集部 小倉彩芽(おぐらあやめ)』という名を見て、背筋がスッと伸び、丁寧に名刺を受け取った。
彼はふっと微笑み、「神宮書房さんの方でしたか…まだお仕事をしたことはないですけど…」と含みを持たせて、挨拶をした。編集者がわざわざ作家に挨拶する時は、目的がしっかりしているからだ。田所には慣れたやり取りだった。だが内心は彩芽という名に背筋が凍る思いだった。