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Deep Throat - ディープスロート
第3章 BLACKMAIL
彩芽は笑みを浮かべた。
「『出版社の者なんですが…明日…作家の田所修先生のご自宅に挨拶に伺うんです…先生が大好きだという確かな情報を聞きまして…一つご用意して頂けないでしょうか…』ってお店に電話しました…」

田所は彩芽の話が終わらない内に、畳に両手をついて、「はははは…」と笑いだした。そして手を額に置き、大きくなりそうな笑い声を、俯いて必死に我慢していた。

「それは誰情報…?」と田所が笑いながら問いただすと、彩芽は「私が作りました…」と両眼を大きく開け、嘘を認めた。

田所は彩芽の機転の利いた嘘に思わず、「100点…」と笑みを返した。田所自身、このお店のチョコレートを以前食べたことはあるが、周りに大好きだと伝えたことはなかった。

「朝一でお店に取りに行きました…」と彩芽が話を結んだ。

田所は笑みを浮かべていたが、正直悩んでいた。

神宮書房からの依頼は丁重に断るつもりであった。彩芽の気持ちに傷がつかないようにするつもりだった。だが、こんな楽しいやり取りを、ほぼ初対面、ほぼ営業経験が感じられない、若い社員と交わすと、田所は断るにも説得力のある理由が必要だと思い、彼は自身の手帳を開いた。
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