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Deep Throat - ディープスロート
第3章 BLACKMAIL
田所はその封筒に書かれている字体を見て、すぐに彩花のものだと判った。書道で師範の資格を持った、彩花の達筆な字だった。郵便局が押した『あて所に尋ねあたりありません』の赤インクも色あせていなかった。

彩芽は喉が渇いたのか、冷めてしまった緑茶を一気に飲み干した。

彼女はテーブルの上に1本の黒い万年筆を置いた。

田所の片手が彼の口をゆっくりと抑えた。

「きっと先生が母に送ったものですよね…」
彩芽は万年筆を回し、小さな文字を読み始めた。
「『from Osamu to Ayaka』と記されています」

田所もただならぬ空気に、喉がカラカラになっていた。だが緑茶を飲むことはしなかった。

彩芽は万年筆をバッグに戻し、脚元で封筒に触れた。

「ここには…先生が母をどのように愛し…母がどのように先生に愛され…母が先生の世界観から抜け出せなくなった…気持ちも記されています…」

彩芽は目に涙を溜めていた。その様子を見て、田所は『読んだのか…?』と聞く必要もなかった。彼女が母の死にショックを受け、手紙を読み、目の前に母を捨てたと確信する男がいる状況では、彩芽が感情的になるのは時間の問題だった。
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