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第4章 秘密保持契約

「編集長には田所が執筆するとだけ伝えてほしい…君が小説の著者になるとか…お金のことは控えてほしい…話したらご破算にされる可能性がある…なので詳細は『2人で協議』という条件を出した…」

今度は彩芽が息を吐き、じっくりと考えていた。

「分かりました…編集長には先生の要望として『出来上がった作品を読んでから、決めてほしい』と仰っています…と伝えます…」

田所は彩芽の回答を聞き、ほくそ笑んだ。彼女が才気に恵まれ、潜在能力が高い女性と認識した。

田所は「ふぅ…」と短く息を吐き、穏やかな表情で、こう伝えた。

「まずは秘密保持契約を結ばないと…」

彩芽はその単語を聞いて、「えっ…」と小さな声を出した。

ビジネスの世界では、何か新しい商品を作り出す、アイデアを生み出す、それを実行に移す時、必ずと言っていいほど『秘密保持契約』を交わす。これは重要な情報が公にならないよう、双方が情報を漏らさないと約束することであった。

彩芽も秘密保持契約の事を知っていたが、自身で作成したことがない不安から、彼女はどうしたら良いのか分からず、田所の顔を見つめた。

彼は彩芽の目を見つめ、「大丈夫…」と安心させ、席を立った。

彩芽は田所の姿を目で追っていた。