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第4章 秘密保持契約

執筆を決めた田所の頭の中は、すでに想像が大きく膨らんでいた。彼には目の前に彩花の日記が届いたようなイメージだった。その大切な日記には恋人の想いが詰まっていた。だからこそ彩花はシュリンクフィルムで密閉したのだと。

シュリンクフィルムを開封する紐を見つけたように、彩芽の手首に付けられていた腕時計に触れた。

「見たことのある時計だ…」
田所は小さな円形の表示板に触れ、シルバーのバンドにも手を掛ける。

「母から高校生の時にもらいました…」
「君も彩花と同じで…右手にするんだ…？少数派だな…」と尋ねた。

彩芽は息苦しい中、「母がそうしていましたから…」と答え、
田所は「それは私が彩花に贈ったものだ…」と伝えた。

男はフィルムの紐を伸ばすように、右手にされた腕時計を外していった。

彩芽は外されたと感じると、腕の力が抜け、テーブルに両手を置いていた。

「これは危ないから…外しておこう…」と男は女に伝えた。

「あっ…先生…」と彩芽の声は力が抜けていた。

男の手はフィルムについた紐を外すように、彩芽のジャケットボタンを外していた。