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第4章 秘密保持契約

「私だって君の気持ちがよく分からない…彩花と同じ香水を付けて…私の注意を引こうとする…その気持ちがね…」

彩芽は「ハッ…」と声を上げる。
彼女の背後に座る田所も息も荒くなっていた。

「他にも分からない事がたくさんあるだろう…？」
男は彩芽の信じられないという気持ちを、さらに引き出そうとした。

彩芽は大きく息を吐き出してから、田所の問いに答えていく。

「縄を前にして…自分から手を後ろに回したら…どうなるか分かっているのに…どうして母は…『あの諦めにも似た、身を委ねる瞬間が忘れられない』と綴っていたのか…どうしてそれが嬉しかったのか…私には分からないです…」

彩芽の声は最後には震えていた。

田所は彩芽を抱きしめる力を緩めず、「彩花はそう手紙に綴っていたのか…？」と彼女に尋ねた。

彩芽は小さく頷き、「はい…」と答えていた。

「じゃあ…目を瞑るんだ…目の前には彩花の日記がある…本のように厚いのか…？」

そう言われ、彩芽は男に従い、目を閉じた。

「はい…真っ赤な日記帳で…分厚いです…そこには黒い万年筆が置いてあります…」

彩芽は母と過ごした年月を回想、スラスラと答えていた。