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Deep Throat - ディープスロート
第5章 危険な芽
彩芽はシートの落ちる花びらを見つめ、手は田所が買ってきた和菓子に伸びていた。彩芽は小食だが、この日はお腹が空いていて、サンドウィッチも食べ、今度は甘いものを欲していた。
それを田所は「よく食べるね…」と微笑んで見ていた。
「こんな癒されるお庭で食べていたら…美味しいに決まっているじゃないですか…」と頬に団子を含め、口を抑えて話していた。
彩芽は田所の温厚な表情を見つめていた。亡き母と同学年で、サラサラの黒髪を分け、目つきから怖さが感じられなかった。作家は頭を使う職のため、田所の痩せた体型から、親しみやすい雰囲気が漂っていた。母が田所に好意を頂いたのも、分かる気がすると思っていた。
彩芽は同時に、本当に好きな人との関係がダメになると、正反対の人を好きになったりする、という言葉を思い出していた。田所は正に彼女の父親とは正反対だった。子供の頃から、『なぜ母はこの人と結婚したのだろう…』と不思議だった。寡黙で厳しく、表情が硬く、あまり笑ったこと、弱音を吐いたところを見たこと、聞いたことがなかった。根っからの九州男児という背景があったかもしれないが、体も声も大きく、彩芽はそんな父親が近寄りがたく、苦手だった。
それを田所は「よく食べるね…」と微笑んで見ていた。
「こんな癒されるお庭で食べていたら…美味しいに決まっているじゃないですか…」と頬に団子を含め、口を抑えて話していた。
彩芽は田所の温厚な表情を見つめていた。亡き母と同学年で、サラサラの黒髪を分け、目つきから怖さが感じられなかった。作家は頭を使う職のため、田所の痩せた体型から、親しみやすい雰囲気が漂っていた。母が田所に好意を頂いたのも、分かる気がすると思っていた。
彩芽は同時に、本当に好きな人との関係がダメになると、正反対の人を好きになったりする、という言葉を思い出していた。田所は正に彼女の父親とは正反対だった。子供の頃から、『なぜ母はこの人と結婚したのだろう…』と不思議だった。寡黙で厳しく、表情が硬く、あまり笑ったこと、弱音を吐いたところを見たこと、聞いたことがなかった。根っからの九州男児という背景があったかもしれないが、体も声も大きく、彩芽はそんな父親が近寄りがたく、苦手だった。