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第5章 危険な芽

「昨日はどうだった…？」

田所の突然の問いに、彩芽は「えっ…」と答えるだけだった。彼女は田所を見ていたが、意識が彼に向いていなかった。

田所は少し補足して尋ねてみた。
「昨日が初めてだったんでしょう…？どうだった…？」と。

彩芽はシートに両手を付き、「はい…」と答えるだけだった。

田所はウイスキーの入ったロックグラスを胸の近くに置いて、左肘をシートに付き、横になっていく。彼は高山編集長に貰ったウイスキーを開けて飲んでいた。

「小説を書くには…君がどう感じたか…それをきちんと中身に入れたいしね…」

田所は穏やかな口調で話しかけていた。

彩芽は、しばし下を向いて考え、下ろした髪を耳に掻き分けて、言葉を選んで話し始めた。

「めちゃくちゃ変な感じでした…ドキドキが止まらなくて…自分の体のコントールを失ったみたいで…衝撃的でした…」

田所は「そっか…衝撃的だったか…」と頷き、彩芽がもっと話すのを待った。

だが彼女は、「うーん…」と黙ってしまい、彼は質問を変えた。

「好きか…嫌いか…で言ったら…どっち…？」と。

彩芽は小さな声で、「いやです…」と答え、そして「あんなにドキドキしたら…倒れるかもしれません…」と続けた。

「じゃあ倒れないようにしてあげるよ…」
彩芽は田所の言葉に、「えっ…」と声を出していた。