この作品は18歳未満閲覧禁止です
- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
Deep Throat - ディープスロート
第5章 危険な芽
田所は密かに彩芽の服装を気にしていた。白いシャツを着ているとはいえ、上下黒の服だったからだ。まるで喪服姿だった。微笑みを浮かべ、明るく振舞ってはいたが、彼女の心は喪に服しているようだった。田所は、そんな彼女の気持ちを新しい体験で元気づけようとした。彼女の胸が高鳴り、良いことが起きる前触れを感じれば、心も華やぐだろうと考えた。
田所にとってこの時期は、見慣れた平凡な風景が年に一度、桜の花によって豪勢な春色に彩られると感じていた。特に今年は桜が粋な演出したものだと、ウイスキーを口に含み、感慨深く眺めていた。赤い縄が幹近くの枝に掛けられていた。その縄を下に辿っていくと、そこには彩芽という女が全身を縛られ、何とか立っていた。
黒ずくめの衣装に、赤い縄が胸元から足首まで女の自由を奪っていた。まるで桜の老樹が心を涙で染める彩芽という女を捕らえ、女の涙を洗い、枝の先に咲いた花で慰めているようだった。枝々に桜の花が白い渦のように咲き溢れ、柔らかい球体のように咲き集まった花房を幾つも重ねていた。陽光を求め横に伸びた枝々が、幾つもの花房の重みで垂れ下がり、女の姿を隠そうとしているようだった。
田所にとってこの時期は、見慣れた平凡な風景が年に一度、桜の花によって豪勢な春色に彩られると感じていた。特に今年は桜が粋な演出したものだと、ウイスキーを口に含み、感慨深く眺めていた。赤い縄が幹近くの枝に掛けられていた。その縄を下に辿っていくと、そこには彩芽という女が全身を縛られ、何とか立っていた。
黒ずくめの衣装に、赤い縄が胸元から足首まで女の自由を奪っていた。まるで桜の老樹が心を涙で染める彩芽という女を捕らえ、女の涙を洗い、枝の先に咲いた花で慰めているようだった。枝々に桜の花が白い渦のように咲き溢れ、柔らかい球体のように咲き集まった花房を幾つも重ねていた。陽光を求め横に伸びた枝々が、幾つもの花房の重みで垂れ下がり、女の姿を隠そうとしているようだった。